法人営業は安倍政権支持だったと思う

先日「手形決済60日以内、中小資金繰り改善へ短縮(2020.9.12 日経)」という報道を読みました。
直接官公庁向けの売りは今ありませんが、ついニヤニヤしてしまいます。

こういうところが安倍内閣らしい。
常に資金回収の悩みがつきまとう営業は贔屓をしたくなります、手形が60日になると相当楽です。

これまで経済政策で手形の長さを気にした内閣があったでしょうか。

顧客から安倍政権の悪口を聞いたことがない

思えば私の周りの営業やお客様で安倍総理を悪く言う人はいませんでした。取引先に恵まれたのだと思っております。

黒田東彦日銀総裁に至ってはファンを公言する人もいるぐらいで、せいぜいが「トリクルダウンはさすがに無理のある説明だよなあ」といっていた程度です。

金利も下げてくれるし株価も上がった。
年収は低いままですが、ともあれ失業率は下がった。
企業業績も良い、なにより潰れ会社が減った。

平均年収の低さが言われますが、無職の怖さは味わわないとわからないでしょう。会社が潰れれば否応なくです。
少なくない法人営業が安倍総理に続けてほしいと思っていたのではないでしょうか。

なお申し上げますと私の年収は中流より下です、車も手放して久しい。
風呂の水を洗濯に利用する家です。学もなく経済のこともわかりませんが、確実に申し上げられるのは

株が上がって不幸になる人はいない

ということです。

内閣発足時に1万円ギリギリだった日経平均が今やコロナショックでも2万3千円です。
社会の下のレベルである私に恩恵が来るのは最後でしかも僅かでしょう。

それぐらいは無学な営業でもわかります、むしろ以前の無策と先の見えない不景気に戻るぐらいなら今のほうがマシであります。

2012年以前は何もかもが悪すぎた

70%の支持には政府も金融当局も、それ以前の程度が低過ぎて皆うんざりしていたという事情があると思います。

何も良くならなかった、というより年々悪くなる一方でした。

常に「財政規律」「財政の健全化」「構造改革」ばかりで目の前の問題に対処する政策ははっきり皆無でした。真面目にやる気がないとすら感じました。

日銀の金融政策で言えばわかりやすい。

「平成の鬼平」と言われて浮かれた三重野日銀総裁のバブル崩壊以来、学者気取りの白川総裁に至るまでロクなのがいなかった。

大会社はもちろんのこと、誇張でなく中小企業はかなり死にかけてました。本当に山ほど潰れた。

特に2000年(日銀総裁:速水優/大蔵大臣:宮沢喜一)と2006年(日銀総裁:福井俊彦/総理大臣:小泉純一郎)の時に公定歩合を上げたのにはたまげた記憶があります。
仕事だけでなく個人的にも借金を抱えていましたから一大事でした。

設備投資と運転資金・法人営業にとって金利は最大の関心事

私の借金はさておき、多くの法人営業は設備投資が伴う仕事です。不景気で需要が落ちこむなか、どうやって償却するかは常に悩みの種。
しかも不景気で生産数は未達、かつデフレで単価も下がり大体は償却しきれない。そして潰れたのです。

それでなくとも手形の問題があります。
さすがに「台風手形」「お産手形」はなくなっておりましたが、かつて120日は普通で150日も多かった。

一方で扱いは受注後2ー3ヶ月の納期を要する製品ばかり。半年以上も現金が入らないのですから金利の話は常に大問題なのです。
コストダウンを重ねた売上で手形を割る虚しさは言葉になりません。

しかも超円高です。リーマンショックの後など「誰も気にかけてくれない」と皆思っていた。
白川総裁など気にかけない筆頭でした。

その頃、FRB議長になったベン・バーナンキ氏の話を読んでいてヘリコプターマネーという言葉を見ました。アメリカ人はちょっとイカれてるんじゃないかと思いながらも凄い発想だと。

「ヘリコプターベン」なんてかっこいい渾名です。

でもこんな政策日本でやる人はいないだろうなあ、と何度見返してもコストダウンは無理そうな原価表を眺めながら溜息をついていました。

ヘリマネの安倍/黒田コンビはまれにみる頼もしさ

そうしたら安倍首相と黒田総裁が本当に始めたわけです。
足りなきゃ言え、青天井でバラまくと言い切った。まさしく「ヘリマネ」であります。

「異次元金融緩和」「黒田バズーカ」、なんと景気のいい話でしょう。
大きな声では言えませんが私は銀行が大嫌いです、しかし黒田総裁になってから彼等が急速に愛想良くなったのは印象的でした。

その上コロナ流行で景気が極度に悪化したとなればなんと特別定額給付金です。景気対策の為にあまねく全ての国民に現金を配った内閣など今迄あったでしょうか。

金額はどうでもよろしい、どこまでもやるという姿勢を見せられると市場は安心するのです。
無論それだけでなく政府保証付きの無金利でどしどし貸し出しもしました。

誰が名付けたかアベノミクスという言葉はセンスが悪すぎて好きではありませんが、ともかく安倍晋三総理/黒田総裁のコンビは営業から見れば初めてみる頼もしさでした。

アベノミクスは「成果が少ない」「問題が残る」はないものねだり

第二次安倍政権は終わってみれば経済対策の効果は限定的だったと言われます。斯界の権威とやらによれば大規模緩和は後々に禍根を残した大問題だそうです。
しかし目の前に問題を抱えた民草たる我々にとってはどうでもいい。そもそもその権威たちは30年近くあてにならなかった。

バブル崩壊以降、誇張でなく何十年も無策が続いたのです。
数年で元に戻ると本気で思っているのでしょうか。

2012年の時点でほとんどぎりぎりでした、たかだか数年の金融政策程度で回復するはずがないと素人ですら思っています。

なるほど今も苦しいが、8年前よりはだいぶマシです。
死んだ子の歳を数えるに似ていますが、最近お客様と話していたら

「リーマンの時(2008年)にこうしてくれていればなあ」

と仰っておられました。私も心から同意した次第です。きっと今の景気ももう少し違っていたでしょう。
それ以上に、

コロナ禍で大変な不景気ですが、前の白川総裁みたいなのが現在日銀のトップだったらと想像するとぞっとします。

新聞受けはいいが何もしない白川日銀

白川日銀、いかほどに無策であったか。

安倍総理辞任の直前ですから本当に偶然ですが、連休前に2010年の白川総裁時代の日銀議事録が日経で報じられていました(2020年8月1日・朝刊)。往時を身をもって体験したものとしては実に気分の悪くなる内容です。

白川日銀議事録・責任逃れが得意のサラリーマンのごとき保身のみ

全編にわたり話題となっているのは

  • 日銀は財政規律が一番大事
  • デフレへの責任はないが認識が甘いと言われないようにしたい

というとんでもない内容です。いかに非難されないように立ち回るかが全てで、国の大事をなんとかしようなど全く考えていません。

リーマン後次々と企業が倒産していることへの危機感や、職を失い進退極まっている人たちのことなどまるでこの世に存在しないかのようであったことがわかります。

「どうしてこれほど円高を嫌がるのかが分からない。この程度の円高で海外に出ていかなければいけない人は出ていけばいい」(須田審議委員) 

のくだりに至ってはめまいがした、最高に苦しかったあの頃こんなことを考えていたとは。
出席者全員がうなずいたらしいですからシラフの打ち合わせとはとても思えないような発言です。

繰り返しますがリーマンショックの後です、生活や人生そのものが無茶苦茶になった方がたくさんおられましたが、当時その人達の前で言ったら胸ぐらをつかまれたでしょう。

政治腐敗はあって当たり前・一個人の生業と同じ

安倍政権の最後はメディアでは加計問題やら森友学園問題、桜を見る会など非難轟々でした。
取り入っておこぼれに与かろうという輩が実に多かったことがわかります。

なにしろ7年8ヶ月です、さぞかし多くの有象無象が群がったでしょう、しかしそれも民主主義です。
なお私の身近に非難する人はいませんでした、と申しますよりそもそも話題にならなかった。

比べるべくもないながら、しがない営業でさえ善人や教養人のみを相手にして生計の途は成り立ちません。

相手が犯罪者でないかぎりクズであろうが嫌いだろうが頭を下げお追従を言います。
買ってほしいからです、たかだか生活を守るためだけにです。
しかしそれができないものに担当は任せられない。

自分は違う、というものは内省の感覚に欠けているだけです。付き合えばロクなことがない人種です。

いわんや一国の宰相ともなれば国の行く末を決めるわけです、一億の生活がかかっている。きれいごとで済む訳がない。
さぞかし多くの有象無象を相手にすることになるでしょう。

政治家が腐敗しているならば有権者も腐っているはず

メディアを面白く眺める理由は、政治家を腐敗したといいつつ有権者を神の如く持ち上げることです。

政治家が金権にして暗愚なら有権者も同じく金権にして暗愚でしょう。こんな矛盾した話でワイドショーを観ていられるのは政治的判断力は本来少数のものだということを示しております。

しかし繰り返しますがこの国は民主主義です、数が決める。
そして私がそうであるように選挙民は日々の生計のために生きています。
政策実現のためには胡散臭いものたちも味方に引き入れねば成り立たつまいと容易に想像がつきます。

これは安倍政権の擁護ではありません、世知辛い世の中で生きようとすれば大体そんなものだと言いたいのです。

なお営業という仕事では、

自分はきれいであり、きれいなものしか受け付けないという人ほど無責任で、無責任はケチと相場が決まっております。

自ら為す気がなくともなんでも言えるのです、これまた民主主義であります。

その点日本のメディアはタチが悪い、人一倍人気を気にするくせにきれいごとしか言わず、しかも社説では「政治家には清濁併せ呑む覚悟が必要」などとのたまいます。
それでいながらささいな傷も許さず、政治家といえばほとんど極悪人呼ばわりです。

そのくせ死んだ途端に惜しい人を亡くしたとやる。
だからいつまで経ってもワイドショーと同じく信用がありません。

重要な時事問題ほど自分の意見は明らかにせず、風向きをじっと見た上で論調を決める。どこかの安っぽいサラリーマンみたいです。

外電で日本のマスコミが書いた記事をを貴重な参考意見として取り上げるのを見たことがない。
あまりにも「ポピュリズム」に走りすぎているので相手にされないのです。
今回も辞任発表時は非難ばかりでしたが、安倍晋三氏の支持率が7割ほどであり、しかも海外で評価されていると分かった途端にだんまりです。

安倍晋三首相が腐敗を非難されるならば、私も含め支持した国民が非難されるべきでしょう。民主主義ですから選んだものにも責任はあります。

その気もないマスメディアの正義面は気分が悪い、八方美人・太鼓持ちは彼らのための言葉です。
臆面もなく道徳や正義を説く手合いにはロクなのがいませんが、いつも風向きをみて立場を決める徒輩が政治腐敗の非難などちゃんちゃらおかしい。

というより危険といえます。こういった連中は自分にさえ都合が良ければ何を言い出すか分かったものではありません。

嘘だろうが軍国だろうがなんでも言い立てる。

士農工商では一番下の営業でさえ24時間テレビなんてやりません。あれを平気でやってのける手合いの言うことはいい加減に聞き流すのが丁度であります。

タイトルとURLをコピーしました